宇宙船

映画の話

幸福


幸せな様子が、登場人物だけを変えて、同じように続いている恐怖、というようなことが雑誌に載っていました。


『幸福』(1965年)

フランソワとテレーズはとても仲の良いラブラブ夫婦で、ふたりの子供と幸せに暮らしていました。
ピクニックに行ったり、働いたり、親戚の出産や友人の結婚を祝ったり、平凡な幸せが繰り返される毎日でした。
そんなある日、フランソワは郵便局で出会ったエミリーという女性に恋をします。

何かドラマチックな展開や駆け引きがあるわけではなくて、淡々とした映画です。
淡々と平凡な日々が描かれるのと同じやり方で、フランソワの不倫が描かれていて、少し不気味でした。

フランソワはテレーズに飽きてしまったわけではなくて、テレーズのことはずっと愛する妻で、そして同じくらいエミリーのことも愛していました。
「ふたりも愛する人がいて僕は幸せだ」なんて自分で言っていました。

本当に、こういう気持ちだけは全然理解することができません。
もちろんテレーズもエミリーもあんまりよくわかっていないんですが、フランソワはめちゃくちゃ幸せそうで、だから女性陣も、まぁ愛されてるわけですから、幸せになっちゃうんですよね。

エミリーと出会う前後で、フランソワの家庭での振る舞いは全く変わりません。だけどこっちの、わたしの気持ちばかりが動かされて、フランソワたちは一定のリズム刻んでるのでした。

さあ、このまま、ふたりを愛して幸せに暮らしましたとさ、となるのかなぁというところで、テレーズが死んでしまいます。
気づいたらテレーズのポジションにエミリーがいました。
けして奪ったとか、誰かがそう計画したとかではなく、ただ自然と席が空き、エミリーが座ったのでした。
なんて淡白なんだ、と思いました。

ラブラブ夫婦のフランソワとエミリーが、ふたりの子供とピクニックへ行き、働き、幸せに暮らしていました。

しあわせとは……と思いました。
そしてラストショットで、この席替えは永遠に繰り返されるのだと理解しました。

スムーズな席替えも怖かったけど、疑いもなく「幸せだ」と心から言うフランソワのことがものすごく恐ろしかったです。彼は機械なのか?

一切暗くならない色彩が、また「幸せ感」を強調していました。
とても可愛かったです。
それだけでもかなり観ていて楽しい。
家事をしているシーンなのに、細かいカットで手だけ映った映像や、花がメインの映像になっていたり、他にも、芸術的なところを重視した美しい構図が多かったです。
衣装もおしゃれです。

わたしは、シーンの切り替わりに暗転するところで、フィルムに青や赤の色がつくのがとても好きでした。